2024年1月から始まった新NISA制度は、多くの投資家が資産を形成しやすくなるように設計されています。しかし、この制度の最大の特徴である非課税枠1800万円の利用方法や、再利用の仕組みはどのようになっているのでしょうか?
今回は、新NISAの非課税枠がどのように再利用できるのか、またその非課税枠を有効に活用する方法について詳しく解説します。
この記事を読めば、新NISAの非課税枠の仕組みについて理解が深まり、そのメリットを最大限に活用する方法を学ぶことができます。初心者から上級者まで、新NISAをより効果的に活用するための知識を身につけることができますので、最後までご覧ください。
旧NISAと新NISAの違いについて

旧NISAと新NISAは、どのような違いがあるのでしょうか?
それぞれの制度の違いは、次の通りになっています。
旧NISA | 新NISA(2024年1月~) | |||
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
年間投資額 | 120万円 | 40万円 | 240万円 | 120万円 |
非課税期間 | 5年間 | 20年間 | 無期限 | |
非課税保有限度額 | 600万円 | 800万円 | 1800万円(うち成長投資枠最大1200万円) | |
口座開設期間 | 2023年まで | 2023年まで | 恒久化 | |
投資対象商品 | 上場株式 投資信託 ETF(上場投資信託) REIT(不動産投資信託) | 長期の成長・分散投資に適した一定の投資信託(金融庁の基準を満たした投資信託も可) | 上場株式 投資信託 ETF(上場投資信託) REIT(不動産投資信託) | 長期の成長・分散投資に適した一定の投資信託(金融庁の基準を満たした投資信託も可) |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 | ||
売却分の非課税枠 | 売却した場合、非課税枠は復活しない | 売却した場合、非課税枠は翌年以降、再利用可能 | ||
併用 | 不可能(どちらか一方だけしか選べない) | 可能 |
旧NISAと新NISAの主な違いは、2つの投資枠が併用可能であること、年間投資枠の引き上げ、非課税保有限度額の引き上げなどが挙げられます。
そこで、それぞれの主な違いについて解説します。
成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能
旧NISAでは、一般NISAとつみたてNISAを併用することができず、どちらか一方だけしか選べませんでした。しかし、新NISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠を組み合わせて利用することができるようになりました。
成長投資枠は、上場株式や投資信託など幅広い商品に投資することができ、積極的にリターンを狙いたい投資家に適した投資枠です。
つみたて投資枠は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限定され、安定した資産形成を目指したい投資家に適した投資枠です。
新NISAでは投資スタイルに応じて、柔軟に資産運用ができるように設計されています。
年間投資枠の引き上げ
旧NISAの場合、一般NISAでは年間120万円、つみたてNISAでは年間40万円までしか投資することができませんでした。しかし新NISAの場合、成長投資枠では年間240万円、つみたて投資枠では年間120万円に増額されました。
さらに、成長投資枠とつみたて投資枠を併用すれば、年間最大360万円まで非課税で投資することができます。
年間投資枠の引き上げは、新NISAの大きな魅力の一つです。これにより、投資家はより多くの資金を非課税で運用し、将来の資産形成に役立てることができます。
非課税保有限度額の引き上げ
旧NISAの場合、一般NISAの非課税保有限度額は最大600万円、つみたてNISAでは最大800万円まででした。
これに対し、新NISAでは、非課税保有限度額が最大1800万円まで拡大されました(成長投資枠の非課税保有限度額は最大1200万円まで)。
非課税保有限度額の引き上げにより、投資家はより多くの資金を非課税で運用し、効率的に資産を増やすことができるようになります。
非課税期間の無期限化
旧NISAの場合、非課税期間は一般NISAで5年間、つみたてNISAで20年間の制限がありました。そのため、非課税期間が終了すると、利益に対して税金がかかります。
新NISAでは、非課税期間は無期限です。そのため、税金のことを気にすることなく、40年や50年という長い期間にわたって資産を増やすことができます。
非課税期間の無期限化は、新NISAの大きな特徴の一つです。投資家は税金について心配せずに、長期的な視点で資産運用を行うことができます。
売却した分の非課税枠が再利用できる
旧NISAの場合、保有する資産を売却しても、非課税枠を再利用することはできません。しかし、新NISAでは保有する資産を売却した場合、非課税枠が翌年以降に再利用することができます。
例えば、100万円で購入した個別株を2023年度中に売却すれば、2024年に100万円分の非課税枠を再利用することができます。
新NISAの非課税枠1800万円が再利用できる仕組み

新NISAは、投資家がより柔軟に資産運用することができるように設計されています。その中でも特に注目すべきは、非課税枠が再利用できることです。
そこで、新NISAの非課税枠が再利用できる仕組みについて、詳しく解説します。
資産を売却すると購入金額分の非課税枠が再利用できる
新NISAで保有する資産を売却したとき、その分の非課税枠を再利用することができます。
例えば、100万円の個別株を購入し、後に株価が上昇して150万円で売却した場合、非課税枠で再利用できるのは100万円分になります。
非課税枠の再利用は新NISAの魅力の一つであり、投資家は資産形成をより効率的に行うことができます。
資産を売却すると翌年の1月1日から非課税枠が再利用できる
新NISAで資産を売却した場合、翌年の1月1日から非課税枠を再利用することができます。
例えば、新NISAで個別株を2023年12月25日に売却した場合、その分の非課税枠は2024年1月1日から再利用することができます。
新NISAで資産を売却し、非課税枠をその年で再利用することはできません。どうしても非課税枠をすぐに利用したい場合は、夫婦で新NISAを利用することを検討してみましょう。詳しくは、新NISAで1800万円超えたらどうなる?税金対策と運用方法を徹底解説!で解説していますので、そちらを参考にして下さい。
非課税枠が再利用できても投資上限額は増えない
新NISAでは、売却した資産の非課税枠を翌年から再利用することができます。しかし、年間の非課税で投資できる金額が増加するわけではありません。
例えば、100万円で購入した個別株を2023年に売却した場合、2024年になると100万円の非課税枠を再利用することができます。しかし、2024年に非課税で投資できる金額は、成長投資枠とつみたて投資枠を併用しても最大360万円までとなっています。
投資家は計画的に投資を行い、年間投資枠の上限を意識しながら、効率的に資産運用を行うことが大切です。
新NISAの非課税枠1800万円を有効に再利用する方法

新NISAの非課税枠1800万円を最大限活用するためには、投資戦略の事前計画とポートフォリオバランスの定期的な見直し、そして再利用のタイミングがカギになります。
ここでは、非課税枠を最大限に活用するための方法について解説します。
投資戦略を事前に計画する
非課税枠を有効に再利用するためには、事前にしっかりとした投資戦略を計画することが重要です。
非課税枠の再利用を前提とした計画を立てることで、売却時の非課税枠を新しい投資機会へと振り向けることができます。
具体的には、
年初に投資目標を設定し、どの資産にどの程度投資するかを計画する。
市場の状況やポートフォリオを定期的にチェックし、必要に応じて資産の売却や追加投資の計画を立てる。
売却したことによって再利用できる非課税枠を、計画に沿って新たな資産に活用する。
このようにしてあらかじめ計画を立てておくことで、非課税枠を有効に再利用しながら、ポートフォリオの効率化を図ることができます。
ポートフォリオのバランスを定期的に見直す
ポートフォリオのバランスを定期的に見直し、調整することで、非課税枠を有効に再利用することができます。
市場が変化すると、ポートフォリオのバランスが崩れることがあります。定期的に見直して、リスク資産の調整や投資目的に合わなくなった資産などのリバランスを行います。例えば再利用できるようになった非課税枠を、成長が期待できる個別株に投資をすることで、有効に活用することができます。
定期的なポートフォリオの見直しを行うことで、非課税枠を有効に再利用することができ、資産運用の効率を高めることができます。
売却後の非課税枠の再利用タイミング
資産を売却して非課税枠が再利用できるようになった後、その枠をどのタイミングで利用するのかは、市場の状況や自身の投資目標に基づいて判断することが重要です。
無理に急いで再投資するのではなく、適切な投資機会を見極めることが大切になります。
適切なタイミングの例
市場が下落しているとき
「安く買って高く売る」の相場格言があるように、市場が下落しているときには、安く購入できるチャンスです。
市場が回復して将来的に成長が期待できる商品に投資をすることで、利益を大きくすることができます。
特定のセクターや銘柄が多くの投資家に注目されているとき
市場や企業について詳しくリサーチを行い、さらに成長が期待できると判断すれば、将来の利益を大きくすることができます。
再利用できるになった非課税枠を活用するとき、市場の動きや自身の投資目標に基づいて、投資のタイミングを慎重に選ぶことが大切です。
新NISAで賢く運用するポイント

新NISA制度を活用して資産形成を行う場合、効果的な運用戦略を立てることが重要です。特に、投資の目的と期間を明確にすることは、成功への第一歩となります。
そこで、新NISAで賢く運用するポイントについて解説します。
投資の目的と期間を設定する
新NISAで賢く運用するためには、まず自分の投資目的と投資期間を明確に設定することが重要です。
長期的な資産形成を目的とする場合と、短期間でのリターン獲得を目指す場合、選ぶべき商品や戦略が大きく異なります。
長期的な資産形成を目的とする場合
つみたて投資枠を利用して、コツコツと積立投資を行うことが適しています。リターンは低くなりますが、長期間にわたって資産を着実に増やすことができます。
短期間でのリターン獲得を目指す場合
成長投資枠を利用し、リスクもリターンも高い個別株に投資することが適しています。
新NISAで賢く運用するためには、自分自身の投資目的と期間を明確にすることが大切です。そうすることで自分に合った投資戦略を立てることができ、目的に応じた資産形成を行うことができます。
余裕があれば成長投資枠とつみたて投資枠を併用する
新NISA制度を利用する場合、余裕があれば成長投資枠とつみたて投資枠を併用することをおすすめします。
成長投資枠は、より大きなリターンを目指す場合に適した投資枠です。一方で、つみたて投資枠は、比較的リスクが低く、安定した資産形成を目指す場合に適した投資枠です。これら二つの投資枠を組み合わせることで、分散投資の効果を高めながら市場の変動に強い資産運用ができるようになります。
例えば、成長投資枠で、大きな成長が見込まれる個別株に投資をします。一方、つみたて投資枠では、長期的な視点で安定したリターンが見込める投資信託に積立投資を行います。このような資産構成にすることによって、リスクを管理しつつ、資産形成の最大化を狙うことができます。
長期投資に適した商品を選ぶ
新NISAは、長期的な資産形成を目的として設計されています。そのため、長期投資に適した商品を選ぶことが、資産を効率的に増やすカギとなります。
- 成長投資枠では、成長が見込まれる個別株を選びます。ただし、リスク管理を徹底し、企業や業界についてしっかりと調査を行います。
- つみたて投資枠では、低コストで複数の銘柄に分散投資されたインデックスファンドやバランス型ファンドなど、長期的な視点で安定した成長が期待できる商品を選びます。
新NISAでの資産運用においては、長期投資に適した商品を選ぶことが成功のカギとなります。投資目的やリスク許容度に基づいて適切な商品を選ぶことで、時間を味方につけた資産形成を実現することができます。
新NISAの始め方について

新NISAを始めるためには、まずは金融機関の選定から始まります。必要書類を準備し、申し込み手続きを進めることで、口座を開設することができます。
口座開設後はリスク許容度や投資目的に応じた商品を選び、市場の動向を踏まえながら適切なタイミングで投資を行うことが重要です。
口座開設の手順
新NISA口座を開設することが、新NISAを始める第一歩となります。
金融機関によってサービス内容が異なるため、自分の投資スタイルに合ったところを選ぶことが重要です。
新NISA口座の開設手順は、次の通りです。
ネット証券会社、大手銀行、信託銀行などで新NISA口座を開設することができます。
運転免許証やマイナンバーカードなど、口座開設に必要な書類を準備します。
金融機関によって必要書類が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
金融機関のホームページや窓口で、口座開設の申し込みを行います。
ホームページから手続きを行う場合、必要書類はデジタルで提出できる場合がほとんどです。
口座開設の申し込みが終わると、書類の審査が行われます。
審査には税務署の調査も合わせて行われますので、通常は1~2週間ほどかかります。
金融機関から口座開設の承認が下りれば、投資を始めることができます。
必要書類をあらかじめ準備しておけば、スムーズに新NISA口座を開設することができます。
自分に合った金融機関を選ぶことが、新NISAで成功するための第一歩になります。
投資商品の選び方
投資商品には様々な種類があり、それぞれリスクやリターンが異なります。
リスク許容度、投資期間、投資目的に合わせて、自分に合った商品を選ぶことが重要です。
積極的にリターンを狙う商品選定
成長が期待できる個別株などが適しています。
安定したリターンを目指す商品選定
インデックスファンドやバランス型ファンドなど、複数の銘柄に分散投資された投資信託などが適しています。
自分のリスク許容度と投資目標をしっかりと把握した上で、適切な商品選定を行いましょう。
また、定期的にポートフォリオをチェックすることで、目標達成に向けた資産運用を実現することができます。
投資のタイミング
新NISAで投資を始めるとき、市場の状況や投資目的に合わせて適切なタイミングで行動することが大事です。
市場は予測できないことが多いものの、短期的な動きに流されることなく、長期的な視野で投資戦略を立てることが重要です。
投資のタイミング例
市場が下落しているとき
長期的に見ると、市場が下落しているときは安く購入できるチャンスです。しっかりと調査を行い、リスクには注意しましょう。
経済が安定しているとき
経済が安定しているときは、投資リスクは比較的低いと判断できます。ニュースや経済指標を常にチェックし、リスク管理は徹底しましょう。
タイミングが読めないとき
市場のタイミングを予測することができないときは、定期的な積立投資がおすすめです。定期的に一定額を購入することで、安くなったときには多くの商品を購入することができます。
新NISAを利用する際は、投資目標やリスク許容度、そして市場の状況を十分に考慮し、適切な投資タイミングを見極めることが大切です。
市場の動向を定期的に分析し、長期的な視点を持つことが、投資で成功するためのカギとなります。
新NISAの1800万円枠再利用についてよくある質問

最後に、新NISAの1800万円枠再利用についてよくある質問をまとめました。
Q.新NISAの1800万円枠再利用とは何ですか?
新NISAの1800万円枠再利用とは、投資家が最大1800万円までの非課税枠を再利用して、個別株や投資信託などに投資することです。この枠内で得た利益は非課税となります。
また、再利用できる非課税枠は、資産を売却した翌年から利用できるようになります。
Q.再利用できる1800万円枠は、どのように計算されますか?
再利用できる1800万円枠は、購入したときの金額に基づいて計算されます。
たとえば、新NISA口座で100万円分の個別株を購入し、後に値上がりして150万円で売却したときは、100万円分の非課税枠が再利用できます。
利益分は再利用枠には含まれず、元本分のみが計算対象となります。
Q.新NISAの再利用枠を上手に活用するコツはありますか?
新NISAの再利用枠を上手に活用するコツは、投資の目的と期間を明確に設定し、計画的に投資を行うことです。
短期間での売買よりも、中長期的な視点で成長が見込める個別株や投資信託に投資をすることで、非課税枠のメリットを最大限に活用することができます。また、市場の動向を定期的にチェックし、投資ポートフォリオを見直すことも重要です。
非課税枠を再利用する際には、自分の投資戦略に合った商品を選択し、リスク管理をしっかりと行うことが重要になります。
新NISAの非課税枠1800万円が再利用できる仕組みのまとめ
新NISAでは保有する資産を売却した場合、その分の非課税枠を再利用することができます。例えば、100万円で購入した個別株を売却したとき、その100万円分の非課税枠が再び利用可能になります。
ただし、この非課税枠は売却した翌年の1月1日から再利用することができ、その年のうちに再利用することはできません。
また、非課税枠が再利用できるとしても、年間の非課税で投資できる金額が増えるわけではありません、計画的な投資を行いましょう。